VBAの作り方には「書きながら動かす試行錯誤タイプ」と「設計してから書く設計重視タイプ」の2種類があります。どちらが正解ではなく、作業の規模・チームの有無・納期に応じて使い分けることが実務での正解です。
この記事では、次の内容を順番に解説します。
- 2つの設計タイプの特徴と向いている人
- それぞれのメリット・デメリット
- 規模・状況別の使い分け方
- どちらのタイプでも使えるハイブリッドなアプローチ
2つの設計タイプを比較するには?
| 比較項目 | 試行錯誤タイプ | 設計重視タイプ |
|---|---|---|
| 進め方 | まず書いて動かしながら修正 | 手順を整理してからコードを書く |
| スピード | 形になるのが早い | 最初は時間がかかる |
| 品質 | 後から見直しが必要なことも | 最初から整理されやすい |
| 向いている規模 | 小規模・個人利用 | 中〜大規模・チーム・引き継ぎあり |
| 学習効果 | 動かして感覚をつかむ | 構造的な理解が深まる |
試行錯誤タイプの進め方とは?
まずコードを書いて動かしてみて、出てきた結果を確認しながら少しずつ修正していくスタイルです。
' まず動かしてみるコードの例
Dim i As Long
For i = 2 To 10
Cells(i, 2).Value = Cells(i, 1).Value * 2 ' A列を2倍にしてB列へ
Next
動かして「あ、10行目までしか処理されない」と気づいたら、最終行を動的に取得するよう修正する、という流れで進めます。
メリット:
- とにかく手が早く、形になるのが早い
- 動く結果を見ながら理解できるので感覚的に覚えやすい
- 小さな変更を積み重ねるので、1回の失敗が大きくなりにくい
デメリット:
- 「なぜそう書いたか」が後からわからなくなりがち
- 処理が複雑になるとコードが散らかりやすい
- 他の人が見たときに意図が伝わりにくいコードになることがある
向いている人・場面:まずは動くものを見たい人・小規模な個人用マクロ・学習中で感覚をつかむ段階
設計重視タイプの進め方とは?
作り始める前に処理の流れを整理し、手順が固まってからコードを書いていくスタイルです。
設計メモの例:
' 処理の流れを先に日本語で書いておく
' ① 元データの最終行を取得
' ② A列の値を2倍にしてB列に出力
' ③ 処理完了をMsgBoxで通知
この設計メモをそのままコメントとして残しながらコードを書くと、後から読んでも意図が伝わります。
Sub DoubleValues()
Dim lastRow As Long
Dim i As Long
' ① 元データの最終行を取得
lastRow = Cells(Rows.Count, 1).End(xlUp).Row
' ② A列を2倍にしてB列に出力
For i = 2 To lastRow
Cells(i, 2).Value = Cells(i, 1).Value * 2
Next i
' ③ 完了通知
MsgBox "処理が完了しました(" & lastRow - 1 & "件)"
End Sub
メリット:
- 全体像が先に見えるので、途中で方向性を見失いにくい
- 他の人にも理解されやすいコードになる
- 後から改修・拡張がしやすい
デメリット:
- 設計に時間がかかるため、最初の一歩が遅くなる
- 初学者は「考えすぎて手が動かない」状態になりやすい
- 小規模な処理には少し大げさになることも
向いている人・場面:複数人で使うマクロ・引き継ぎが発生する可能性がある・処理が複雑・長期間使い続ける予定がある
規模・状況別にどう使い分けるには?
| 状況 | おすすめのタイプ | 理由 |
|---|---|---|
| 自分だけが使う・50行以下の処理 | 試行錯誤タイプ | スピード重視で十分 |
| 他の人も使う・引き継ぎの可能性あり | 設計重視タイプ | 読みやすさ・保守性が重要 |
| 複数のシートやブックをまたぐ処理 | 設計重視タイプ | 全体構造を先に把握しないと混乱する |
| 急ぎで形だけ作りたい | 試行錯誤タイプ | 後から整理する前提で素早く動かす |
| 学習・練習目的 | どちらでも | 試行錯誤で感覚をつかみ、整理で理解を深める |
ハイブリッドなアプローチとは?
実務では「設計してから書くが、細部は動かしながら調整する」というハイブリッドな進め方が最も現実的です。具体的には次のような流れです。
- 大まかな処理の流れを日本語で箇条書きにする(5分)
- Sub名と処理の骨格だけ先に書く(コードの中身はコメントで)
- 1つの処理単位ずつコードを書いて動かして確認する
- 全体がつながったら、コメントと命名を整える
' ステップ2の例:骨格だけ先に書く
Sub ProcessMonthlyData()
' ① 最終行を取得
' ② データをチェック
' ③ 集計してB列に出力
' ④ 完了メッセージ
End Sub
この骨格があるだけで「どこまで作ったか」「次に何をすべきか」が明確になり、途中で迷いにくくなります。
まとめ
- 試行錯誤タイプ:まず動かして確認しながら作る。小規模・個人用・スピード重視に向いている。
- 設計重視タイプ:手順を整理してからコードを書く。チーム・引き継ぎ・複雑な処理に向いている。
- 使い分けの基準:規模・チームの有無・引き継ぎの可能性で判断する。
- ハイブリッドが現実的:大まかに設計してから、細部は動かしながら調整する進め方が実務では最もバランスが良い。
- どちらのタイプも「後から読んでも意図がわかるコード」を意識することで質が上がる。
よくある質問
初心者はどちらのタイプから始めればいいですか?
試行錯誤タイプから始めるのがおすすめです。まず「動かす体験」を積むことで、VBAへの苦手意識がなくなります。ある程度動くものが作れるようになったら、設計重視の考え方を取り入れていくと自然にスキルアップできます。
設計に使えるツールはありますか?
特別なツールは不要です。紙に手順を箇条書きにするだけで十分です。慣れてきたら、VBAのコメントとして設計メモをそのまま書いておく方法が最もシンプルで実用的です。フローチャートを描きたい場合はExcel自体の図形機能やPowerPointを使う人も多いです。
試行錯誤で作ったコードは後から設計重視型に直した方がいいですか?
使い続けるコードであれば、ある程度固まった時点で整理するのがおすすめです。ただし「1回だけ使って終わり」のコードは整理する必要はありません。「他人に渡す予定がある」「半年後に自分が使う」なら整理する価値があります。
設計が固まる前に書き始めると何が問題になりますか?
処理が複雑になったときに「どこで何をしているか」がわからなくなることです。特に複数のシートやブックをまたぐ処理では、全体像なしに書き始めると途中で整合性が取れなくなり、最初から書き直すことになるリスクがあります。
チームでVBAを使う場合、設計のルールを共有した方がいいですか?
共有した方が管理しやすくなります。最低限「命名ルール」「モジュール分割の方針」「コメントの書き方」の3つを決めておくだけで、他の人が修正しやすいコードになります。完璧なルールより「最低限守れる簡単なルール」の方が実際には機能します。
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