なぜ「脱Excel」しても、結局Excelに戻ってくるのか

「脱Excel」「Excelは古い」といった広告を目にする機会が増えました。とくにシステム会社系の広告に多く、「Excelから卒業しませんか」「もう表計算の時代じゃありません」という打ち出し方をよく見かけます。

複数人での同時編集がしづらい、バージョン管理が煩雑になりやすい、作成した人にしか中身が分からなくなる。こうしたExcelの弱点は事実ですし、否定するつもりはありません。

ただ、実際に導入の現場を見ていると、広告が謳うほど単純には進んでいないことが多いのも事実です。

実際に見た景色:脱Excelしたのに、資料作りではまたExcel

Excel管理からシステムへの切り替えは、珍しい話ではありません。データが一元管理され、入力ミスも減り、「これで脱Excelできた」という声もよく聞きます。

ところが、システムに入ったデータをどう使うかという段階になると、話が変わってきます。月次レポートの体裁を整える、他部署への共有資料を作る、社内向けのプレゼン資料を作る。こうした「加工」の作業は、システム導入後も変わらずExcelで行われている、というケースが少なくありません。

システムからCSVを書き出し、Excelで開いて見やすく整え、グラフや表にして資料へ貼り付ける。この一連の流れは、システムを入れた後もほとんど変わらないまま残ります。「脱Excel」という言葉ほどには、Excelとの距離は縮まっていないというのが実態です。

なぜ、結局Excelに戻ってくるのか

理由は、システムとExcelが担っている役割の違いにあります。システムの画面は、決められた項目を、決められた形で表示することに最適化されています。一方、実務で求められるのは「今月だけ並び順を変えたい」「2つの数字を並べて比較したい」「グラフの色を他の資料に合わせたい」といった、あらかじめ決まっていない細かい調整です。

こうした自由度は、システムよりもExcelの方が圧倒的に高くなります。セルを自由に組み替えられ、関数やVBAで応用が利き、CSVとの相性もいい。だからこそ、システム導入後も、資料の最終仕上げの段階でExcelが選ばれ続けるのだと思います。

システムにしかできないこともある

一方で、システムにはExcelにはない強みも確かにあります。誰が、いつ、何を変更したかという更新履歴が残ること。誤って削除しても復元できる仕組みがあること。この2点は、Excelでは代替が難しい部分です。

Excelのファイルは一度上書きすると元に戻せず、「気づいたら数字が変わっていた」というときに、原因を追うのも簡単ではありません。複数人が同じファイルを扱う業務や、金額・契約に関わる、間違いの許されないデータでは、この差は無視できません。Excelを教える立場としても、この領域までExcelで対応しようとするのは、正直に言って無理があると思っています。

なぜ「脱Excel」が広告になりやすいのか

「脱Excel」という言葉が広告でよく使われる背景には、単純な理由があります。Excelがそれだけビジネスの現場に深く浸透しているからです。

使っている会社が多いツールほど、「そこからの乗り換え」を訴求する広告のターゲットは大きくなります。逆に言えば、「脱Excel」を謳う広告が多いこと自体が、Excelがどれほど根付いているかの裏返しでもあります。

これはシステム会社の姿勢を問題視する話ではなく、広く使われているものほど乗り換え訴求の広告が増えるという、市場としては自然な現象です。だからこそ、広告の言葉をそのまま受け止めるのではなく、自社の業務に本当に当てはまるのかを一度検討してみる価値があります。

Excelを「守りたい」わけではない

ここまで述べてきたことは、Excelを擁護したいという趣旨ではありません。向いていない作業を無理にExcelで続けるのは非効率ですし、複数人が同時に扱うデータや、更新履歴・復元の仕組みが必要な情報は、システムに任せる方が合理的です。

ただ、「新しいから」「Excelは古いから」という理由だけで今の運用を手放すのは、判断としてはもったいないと感じます。手放した先でも、資料作成の場面で結局Excelを使うことになるのであれば、なおさらです。Excelが今も選ばれ続けているのには、それだけの理由があります。

Excelを手放すかどうか、判断する前に確認したいこと

① 本当にExcelが向いていない作業か

切り分けるべきは、「面倒だから」なのか「Excelの仕組み上できないこと」なのかという点です。多くの「面倒」は関数やVBAで解決できます。今の作業でどこがボトルネックになっているかを書き出してみると、システム導入よりも先にVBAでの自動化で解決できるケースが見えてきます。

② そのシステムは、Excelを完全に代替できるか

データの入力・保管はシステムに任せられても、月次レポートや共有資料といった「最後の加工」まで代替できるかは別問題です。導入前にこの部分を確認しておくことで、導入後のギャップを小さくできます。最後の加工が結局Excel任せになるのであれば、その部分だけを先にExcelで効率化しておく、という選択肢も検討に値します。

③ 誰が使うか、その人にとって使いやすいか

管理側の利便性と、現場の使いやすさは別の問題です。実際に日々使う人の目線で使いやすい設計になっているかを確認しないと、システムを導入しても定着せず、結局Excelでの運用に戻ってしまうことになりかねません。

まとめ

Excelを使い続けることは、遅れていることを意味しません。向いている作業に、向いている道具を使っているだけのことです。

広告の言葉に流されるのではなく、自分の目で判断できるようになることが大切だと思います。Excelで解決できるはずの「面倒」を自動化する方法から体系的に学びたい方は、JIMOVEの動画講座もあわせてご覧ください。

よくある質問

Q. Excelを使い続けるのは、時代遅れではないですか?

向いている作業に向いている道具を使っているだけで、遅れているということではありません。判断基準は「新しいか古いか」ではなく「その作業に向いているかどうか」です。

Q. システムを導入すれば、Excelは不要になりますか?

業務によります。データの入力・保管はシステムに任せられても、月次レポートや共有資料に仕上げる「最後の加工」の場面では、Excelが使われ続けるケースが多く見られます。完全に不要になるとは限りません。

Q. システム導入とExcel運用は両立できますか?

できます。データの入力・保管はシステムに、資料作成などの「決まっていない作業」はExcelに、という役割分担が現実的な選択肢です。

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